流派の特徴

流派の特徴

格花

  格花が、形式的には三角形をもって構成されていることは常識となっている。流派の考え方からこの三角形は「天・地・人」と呼んだり「真・副・体」と呼んだりと様々である。当流でもその宇宙感から主の枝を「天・地・人」と呼んでいたが、文化・文政の頃から「一の枝・二の枝・三の枝」と改称した。現代で考えると何でもないようであるが、当時としては非常に開明的であった名称と言えよう。宏道流では生花を「格花」と称している。役枝は上段の枝を「一の枝」、中段の枝を「二の枝」、下段の枝を「三の枝」と呼んでいる。 宏道流格花の基本的な形は、一の枝が湾曲して中央に立ち上るのに対して、二の枝は、一の枝が湾曲する側の前隅に振り出され、三の枝は反対側の前隅に振り出される。主たる三本の枝の他の名称としては、胴内・胴前・留内・控・小角という基本役枝が、陰陽の約束ごとの中にいけられる。 又、これらの役枝を袁中郎宏道の説く「高低疎密画苑の布置に似たり」という考え方や、さらに『瓶史』の中でも述べられている「斉整」(ほどよく釣り合っていること)を大切に様々な花型を定めている。代表的なものとしては「十体」と呼ばれるものと、それから派生した花型に分けられる。

宏道流十体

  十体とは清操体・将離体・澗翠体・邱壑体・瀟颯体・惹雨体・幽寂体・艶陽体・杪茂体・重陰体である。更に流し枝の、重挿けもの、掛け挿けもの、寄せ挿けもの、その他様々の花型に分かれている。事の花として、年始の花・上巳の花、雛の花・端午の花・七夕の花・十五夜の花・重陽の花・故人を偲ぶ花・婚姻の花などがある。当流における格花の体の中で最も代表的なものは清操体であり、言わば格花の基本型にあたる。入門するとまずこの体から学び、どんなに上達しても常に立ち戻るべき体といえる。年始の花や端午の花、重陽の花など、大事な節目の行事のときには、他の体は用いず、必ずこの体をいける決まりになっている。又、将離体は袁中郎宏道の花の思想をくみながら花に対しての心得を中心に考えている体で、宏道流十体と、それより派生した型の精神的な柱となる型である。その考え方は名利や凡庸の気風を離れ、自然の草木をいつくしみ、その花の出生をよく考慮して、より趣深い花をいけるということにある。この体に素材の制限はなく、いけ方などにも特別の指定はない。一言でいえば、「これは」と思った素材であったとき、その持ち味を最大限に生かしきった形でいけるということである。当流が最も大事にしている「生に入りて生を離れる」という考え方であり、重要な体である。なお、積極的に洋花を格花に取り入れているが、その発想はこの将離体の理念に基づいている。

花入・花留

  日本の花に対する花器の考え方は、大いに中国の影響を受けてきた。『瓶史』の中の「器具」の頁でも述べられているが、当流でも銅器を第一等と考える。そしてこれらは古く小振りのものが好まれ、種類としては尊や觚が特に良いとされている。 又、銅器の他には磁気の物、陶器の物も用いる。竹は、寄せ物や二重・三重といった重物や、邱壑体にも見られる掛け物などに用いる。 花留としては「くばり」を用いて花を留めることを第一と考える。「くばり」の素材としては、古来より「はちす」が良いとされる。又、格花の場合は剣山のようなもので花を留めることは、一切禁じている。しかし、新花や現代花ではこの限りではない。 「くばり」以外で花を留める特別な例としては、馬の盥に馬の轡を用いて花を留める特別な例が見られるだけである。

宏道流とは